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ボストンシェーカーのつぶやき

銀杏北通り、三駒ビル地下にて営業しておりますBar Failteです
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  • 01/22/22:47

07.29.13:39

やわらかな風

気持ちの良い午後だった。



僕はいつものように太陽に軽く挨拶をして

最近顔見知りになった入道雲と世間話。

そして、一人で空を泳いでいたんだ。








小さな男の子と、小さな女の子を連れた、お母さんを見かけた。

そのお母さんは、自転車の前に男の子を、後ろには女の子を乗せて。

そしてハンドルの両脇には、大きなスーパーの袋をぶら下げて、自転車をこぎ始めた。



なんてことない、普通の親子。



なのに、どうしてだろう。



すごく、気になったんだ。



だって、子供たちは笑っているのに、お母さんは今にも泣き出しそうな顔をしていたんだもの。





ーもう、『お母さん』なんてやめたい





お母さんの横顔をすり抜ける瞬間に聞こえた、小さな小さな呟き。


誰にも言えない、誰にも言っちゃいけない一言を、僕は聞いてしまったんだ。






子供たちは、二人で声を揃えて歌を歌っている。



 おかあさん

 なあに

 おかあさんって いいにおい

 せんたくしていた においでしょ

 シャボンのあわの においでしょ





その歌声は、幸せの匂いがしたんだ。

愛されてる子供だけが持てる、幸せの匂いがしたんだよ。















駅のホームで、寂しげな表情を浮かべる女の人がいた。

その隣には、優しそうな微笑みを浮かべる男の人。

二人の手は、しっかりと繋がれている。



どうしてそんなに、悲しい顔をしてるんだろう。

どうしてずーっと、俯いたままなんだろう。



顔を上げたら、すぐ隣に優しい男の人の笑顔があるのに。





ーずっと一緒にいたいのに。
 帰りたくなんてないのに。





女の人の鼻先をかすめた瞬間に聞こえた、声にならない声。




一緒にいたい人と、今、一緒にいるのにね。












人間って、なんてもったいない時間を過ごしているんだろう。


人間って、なんで大切なものを大切にしないんだろう。





愛も喜びも幸せも。

ぜんぶ持っているのに。

『満たされない思い』とやらを、大事に大事に抱えちゃって・・・







人間って、バカだなぁ。








なんでも掴める 手があって

どこにでも行ける 足があって

いろんな事を感じられる 心があって

思いを伝えられる 言葉があって





なのに。


バカだなぁ。









ふぅ、と僕がため息をつくと

いっせいに木々がざわめいた。










太陽と地面のあいだは、ぜーんぶ僕の散歩道。


雲とおしゃべりして

鳥とあそんで

花や葉っぱをからかって

たまには雨や雪と、旅をする。






僕には、手も足もないけれど

人間やるより、ずっと楽しいと思うんだ。










ねぇ、『お母さん』をやめたいお母さん。

あなたには、聞こえないの?

子供たちの心の声が。

『おかあさん、だいすき』

って、こんなにも真っ直ぐ叫んでいるのに。






ねぇ、一緒にいたい人と一緒にいるのに、寂しい顔をしているお姉さん。

あなたには、見えないの?

ギュッと握ってる二人の手が。

今、好きな人と一緒にいるってことの、証が。














そうだ。

みんな、風になっちゃえばいいんだ。

みんな、みーんな

風になっちゃえばいいのにな。






僕みたいに。






誘うように

踊るように

僕は高く空に舞い上がった。











『おかあさーん。風に飛ばされちゃうよぅ。』

そう言って、自転車の後ろに乗った女の子が、お母さんにしがみついた。

自転車を止めて、後ろを振り返ったお母さんは、

『大丈夫。お母さんにぎゅーってしてなさいね。飛ばされないように守ってあげるから。』

って、優しく言った。

『お母さん』をやめたいハズのお母さんは、にっこり笑って、そう言ったんだ。







…あれ?









駅のホームで、女の人が、乱れた髪の毛を手で直しながら。

『今日は風が強いね。』

そう言って、そっと男の人の袖を掴んだ。

男の人は、女の人の髪の毛を撫でながら、彼女に小さなキスをした。

『一緒にいたいのに』と嘆いていたハズの女の人は、頬を染めて、幸せそうに男の人を見つめていた。

幸せそうな、笑顔で。








…あれ?










なぁんだ。

ちゃんと分かってたんだ。





人間って、ちょっとだけバカだけど。




人間って、なんだか面白い。






今晩、月と会ったなら、この二人の話をしてあげよう。



今日は、とても気持ちのいい午後だったよって。









ーーーーーーーーーーーーーーー

そんなイメージで、カクテル作りました

名前は「シルフィ」といいます



ボンベイサファイア   20ml
ヒプノテック 20ml
グレープフルーツジュース 15ml
キューカンバシロップ 5ml
シャルトリューズ ヴェール 1スプレー

今日、お客様との会話を楽しんでいる時にふわっとイメージが入ってきて、ストーリーまで考え、完成しました。

8月限定カクテルにします。



※シルフィード(sylphid)とは、西洋の伝説に登場する精霊である。四精霊の一つ。この言葉の起源はパラケルススであり、その著書の中でシルフについて、空気の要素を持つ目に見えない精霊であるとしている。
(wikipedia)
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